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日本の国際貢献の現状
1.ODA(政府開発援助)というのが行われているが…
- ODAってなに?
- 日本の政府が、開発途上国に対して行っている援助の一つ
- 1992年度ODA予算が1兆8,709億円(国民1人あたり14,000円負担)
- 相手国政府から要請があったときに始めて援助を行う
- ODA援助の決定は「4省庁体制」…外務省・大蔵省・通産省・経済企画庁
- 援助資金の使われ方の特徴
- 日本のODAの特徴は円借款が多い
- 借り入れ側の国に返済義務が生じ、開発途上国の債務累積の為に首が回らなくなっているところもある。
- 贈与の場合に「日本政府の使用用途指定」の場合が多い
- 「わが国が政府開発援助を行うのは、何よりも国際社会の現状と人類の将来への憂慮
から、今や国際的に定着しつつある開発援助の一般理念−人道的・道義的考慮と相互依存の認識−に深く共鳴するからである」(「経済協力の理念」より)
- でも実際には、外務省文書を参照すると…
- 日本は平和国家である。
- 経済国家である。
- 対外的依存がきわめて高い。
- 非西洋国家として「南」から特別の期待を寄せられている。
とあり、これを具体的に言えば、日本の援助は…
- 平和国家を維持するためのコスト
- 経済大国としてのコスト
- 経済的対外依存の為の安全保証
- 南北関係改善の手段
の為に行われることになっており、それが日本の「平和と繁栄」を支える手段の為に行うということである。結局国の利益を重視した援助になってくる。
- 実際のシステムも、この援助によって企業と政治家に利益が流れるようになっている。
- 開発途上国政府が日本の銀行に口座を開設
- その口座に日本政府からお金が振り込まれる
- その口座を通じて日本企業(特にゼネコン企業)にお金が振り込まれる
- 裏ではゼネコン企業と政治家との裏取引が多く行なわれているという。
(通常、これらは「企業秘密」「内政不干渉」「外交機密」によって国民には隠されている)
ODAについてこんな実例があります。カンボジアではODAによる開発をカンボジアの建設会社が行なっていますが、例えば病院を作るにしても建材やセメントは日本のものを使わなければならない決まりになっています。こんな事は必要ありません。海外に対する援助が、結局は大資本の懐に行くのです。ですから、日本の皆さんは有権者としてODAがどういった決定をされているのか、もっとチェックしていく機能を求めていくことが必要です。
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バーナード・クリシャー(国際ジャーナリスト) |
- ODAの結果起こってきている問題点
住民が、ダム、空港、発電所などの大規模プロジェクトにより、長年住んでいた土地を強制立ち退きさせられ、辺境地への生活を余儀なくされる。しかし、土地を離れ、新たな収入のつてを確保できない場合は、人々は都市へ向かうことになる。彼らを「開発難民」と呼ぶ
が、都市のスラムの多くはこの「開発難民」とさえも言われている。
そして、「企業の経費削減」のための環境アセスメントもまともに行われず、地元の人々が公害病に遭ったり、農作物に被害が発生することもあるという。
また、上のような援助によって開発途上国に作られた医療施設も、日本などの工業国の医療の発展に伴って治療が高額になり、一般の庶民がとても受けられるようなものではなくなってきています。治療が高額になってきた背景には、工業国政府が医療援助の大半を高度技術の事業に向けているという現実もあるのです。
2.PKO協力法が話題になっていたけれど…
PKOってなに?
- PKOとは、「国連平和維持活動(Peace Keeping Operation)」のこと。国連が紛争の拡大防止や休戦協定実行のために、国連加盟国が自発的に(兵力提供は強制でなく加盟国の自発に待つ)提供したPKF「国連平和維持軍(Peace
Keeping Force)」によって行われます。
それゆえに政治的に中立(中立原則)、派遣は受け入れ国の同意に基づく(同意原則)、自衛のため以外に武力行使をしない(自衛原則)があるはずなのに、冷戦の終結後、常任理事国の中でのアメリカの発言力が強まり、そのために「アメリカに反抗するものには制裁を加える」といった風に変質してきている。国連憲章の中にこのような規定は存在しないということで、問題になってきています。
PKO協力法とは日本の自衛隊がそのPKO部隊に参加する為に定められた法律。
自衛隊のカンボジア派兵とその問題点
- 1993年、前述のPKO協力法に基づいて自衛隊が内戦中のカンボジアに派兵された。
アジア諸国は「日本の再侵略の第一歩」とこれを激しく非難。それ以前に戦争放棄、軍備及び交戦権の否認を掲げた「日本国憲法」第九条に違反しているという見方もある。
日本国憲法第九条 |
@日本国民は正義と平和を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 |
A前項の目的を達成する為、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。 |
また、自衛隊がカンボジア入りにしたときに、外貨の持ち込みによって現地の通貨インフレを引き起こし、最貧民の層の人々にとっては生活の締めつけ要因になった。
そして、自衛隊が職務を遂行して引揚げるときに、日本が使っていた基地(冷房、発電設備付き)をカンボジア政府に贈与していったのですが、現地にはそれを必要とする人も、使いこなせる人もなく、それを管理維持するため費用のみが莫大にかさんできているのです。
3.ルワンダの自衛隊派遣とその問題点
日本政府は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からの要請で(裏ではアメリカの強い要求があったと言われていますが…)ザイールのゴマへ自衛隊を派遣することを閣議で決定。しかし、これは国連平和維持活動(PKO)として派遣されるのではないのです。現地には派遣国の部隊を統括する国連組織は存在しておらず、しかも治安の悪いために、独自の軍事行動を迫られることになる訳です。その為に機関銃1丁を同時携行していく訳で、日本人が戦闘に加担する可能性もでてくるのです。この時点ですでに、日本国憲法第9条(平和主義)や、国連平和維持活動協力法(PKO協力法)の「停戦合意が行なわれている地区への非軍事的行為への協力」という条項にも違反しているのです。
現在、政府レベルで行なわれている国際貢献は、援助の手が最も必要とされている最貧困層の人々や立場の弱い女性や子供たちには行き届きにくい仕組みになっている。
それどころか、援助国にとって有利に、そして被援助国にはより負担を強いるものになっていたり、自衛隊派遣のようにアジア周辺諸国に脅威になるような援助が行なわれているのも現実である。
短期的には、一刻も早く援助を必要とされている一般市民に対して緊急医療、食料、飲料水援助や伝染病予防などを行なっていくことが必要ではあるが、長期的には内戦の起こる仕組みを根本から断ち切っていくための援助や国際貢献が必要になってくるのではないだろうか。